【SÉZANNE/セザン】たおやかで軽快なフランス料理(フォーシーズンズホテル丸の内 東京)

2023年5月、ランチタイムの「SÉZANNE(セザン)」に訪問した。

「セザン」は「フォーシーズンズホテル丸の内 東京」の7階に入っている。

スモールラグジュアリーホテルの「フォーシーズンズホテル丸の内 東京」が有する客室は、わずか57室。小さくも洗練されたロビーを抜けてエレベーターで7階に到着すると、セザンのエントランスが見える。

2021年7月に開業した「セザン」は、わずか1年半で「ミシュランガイド東京2023」にて2つ星を獲得。2022年には「World’s 50 Best Restaurant」にて82位、「Asia’s 50 Best Restaurant」にて17位の実績を持つ。

そして記憶に新しいのは、2023年「Asia’s 50 Best Restaurants」で2位を獲得し、「The Best Restaurant in Japan 2023」に選出されたことだろう。

空間をデザインしたのは、香港を代表する建築家アンドレ・フー氏。

1975年に香港で生まれ、14歳でイギリスに渡りケンブリッジ大学で建築を学んだアンドレ・フー氏は、「ザ・アッパーハウスホテル(香港)」「セントレジス(香港)」「プラトーン・ベイ・ホテル(シンガポール)」「アンダーズ(シンガポール)」「ウォルドーフ・アストリア(バンコク)」「シャングリ・ラホテル東京(日本)」「ホテル・ザ・ミツイ・キョウト(日本)」など、アジアを中心に世界各国で数々のインテリアデザインに携わっている。

「セザン」の空間は、3つの異なるエレメントで構成されている。アペリティフを楽しめる「サロン」、コンテンポラリーな「メインダイニング」、そしてダイナミックなシェフの動きを体感できる特別な個室「シェフズテーブル」だ。

この日はメインダイニングの中央席へ案内されたが、ラグジュアリーとリラクシングなムードが絶妙なバランスで共存する空間で、終始とても居心地が良かった。

席につくと、美しいバカラのグラスが並んだワゴンがやってきた。よく見るとクリストフル社製だ。シャンパンをお薦めしてもらったのでいただくことにした。

「Brut Reserve – Louis Nicaise」(¥2,900)

ムルソーの木樽で熟成させ、しっかりと重厚な味わいが楽しめるシャンパン「リュット プルミエ クリュ レゼルヴ[NV] ルイニケーズ」。柑橘のようなジューシーさと、バターのような香ばしさのどちらも楽しめる。

香りが引き立つソムリエおすすめのグラスで乾杯。

「セザン」の総料理長は、イギリス出身のダニエル・カルバート氏。ミシュラン3つ星レストランであるニューヨークの「Per Se(パー・セ)」とパリの「Epicure at Le Bristol(エピキュール)」で副料理長として研鑽を積む。その後、香港の「Belon(ベロン)」でヘッドシェフとして就任中に「ミシュランガイド香港・マカオ版」で2019年から2年連続で1つ星を獲得。さらに2020年度の「Asia’s 50 Best Restaurant」で4位にランクインという経歴を持つ。

コースのはじめに「セザン」に協力している生産者の名前が並んだ紙が手渡された。ダニエル氏は、日本各地から四季折々の食材を入荷し、現代的かつボーダレスな手法でフランス料理に昇華させている。

そんなダニエル氏の生み出す料理を一言で表すと「軽快なフレンチ」だろう。細部まで緻密に考え抜かれたメニューを「セザン」では味わえるのだ。

ランチコースの「MENU DU JOUR」がスタートする。

4年もの期間をかけて熟成させたコンテチーズを使用。ひと口サイズなので、指で摘んでパクッといただく。温かくて、口の中いっぱいにチーズの香りがしっかりと広がる。

「ラディブール 蕪 酒粕」

二十日大根の上にバターをのせたもの。「ラディブール」はフランスでは定番のビストロメニューだが、酒粕やキャビアを使用して仕上げるのがセザン流だ。

「麦芽大麦サワードウ ブルターニュバター」

パンは2種類いただいた。もっちりと弾力のある食感がたまらない。香り高いブルターニュバターとの相性も抜群だ。

「富山県産白エビ セロリ 北海道産ボタンエビ」

こちらが個人的なベストディッシュ。白エビとボタンエビ、2種類の海老を使用。何度も噛み締めては、プリプリの食感と旨味を堪能する。

「蛤 ホワイトアスパラガス グリーンピース」

蛤から出汁を取ったムースの下には、ホワイトアスパラガスやグリーンピースが隠れている。蛤の味がしっかり出ていて、チープな例えかもしれないが、クラムチャウダーもしくはシチューのような濃厚ささえ感じられる。

ここでスタッフが鍋ごと「酔っ払い鶏」を見せに来てくれた。2週間ハーブに漬け込んでいるそうだ。

「有明山農場美膳軍鶏のポシェ ヴァン・ジョーヌ」

こうして作られたのが「セザン」のシグネチャーメニュー「有明山農場美膳軍鶏のポシェ」だ。中華料理のドランクンチキンから着想を得たメニューだが、間にチキンムースとマッシュルームを詰めてフレンチへと変貌を遂げている。エスニックな味だが食べやすく、緻密に計算されて無駄のない印象的な一皿だった。

「Chaud Lapin – Etienne Simonis」(¥2,000)

2杯目はこちらの白ワインを。

「北海道産帆立 ガレット ホワイトビール」

蕎麦粉のガレットの中は、ふわふわの帆立でとても軽い仕上がり。ベルギービールを使用したソースはこれまた軽く、ビールの苦味もしっかりと感じられる。軽い食感と苦味のコントラストが面白くもベストマッチだ。

「白糠鹿肉 山菜 クロスグリソース」

鹿肉はフライパンのみで25分以上じっくりと焼き、美しく火入れされた姿で提供される。切った感触はとても柔らかいのに、口に運ぶと程よく噛み応えもあり、しっとりとした食感だ。カシスを使った酸味のあるフルーツソースで軽やかさをプラス。

付け合わせの山菜はタラの芽と、赤ワインに一晩中漬け込んだ鹿肉のソーセージ。

「巨峰 バジルとシャンパン」

ここからデザートが続く。さっぱり爽やかな巨峰のグラニテは、シャンパンゼリーと合わさり大人テイストに。

「葉桜タルト サバイヨン」

桜餅をイメージしたメニュー。外側はパリッとしていて餅とはほど遠い食感だが、口の中でそれぞれのレイヤーがミックスされると、まるで本当に桜餅を食べてるかのように感じる不思議なデザートだ。

「クレームブリュレアイスクリーム」

たまごの殻の中に入ったクレームブリュレ。蓋のカラメルを破っていただくのだが、殻が繊細そうなので丁寧な手捌きになる。記念日だったのでキャンドルを灯した状態で提供された。

「ミニャルディーズ」
「ミニャルディーズ」

3種類のミニャルディーズをいただき、これにてコース終了だ。料理の提供スピードもちょうど良く、居心地の良さから気付けば2時間半が経過していた。ランチコースにしては十分すぎるほどのメニュー数だが、完食しても嫌な重さは一切感じられない。

ダニエル氏の紡ぎ出すメニューは、一皿ひと皿がまさに軽快なフランス料理だった。美食都市・東京を代表するレストランであることは間違い無いだろう。

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