7月、夏の京都。「HOTEL THE MITSUI KYOTO(ホテルザミツイキョウト)」のイタリアンレストラン「FORNI(フォルニ)」を訪問した。
300年以上も前に建造された歴史ある「梶井宮門」を再生させ、今はホテルの表玄関になっている。「ホテルザミツイ」について書き始めると長くなってしまうので、今回はこのまま目的のレストランに入店しよう。
「フォルニ」は、イタリア料理が楽しめるオールデイダイニング。グリル料理や釜で焼き上げるピザを中心に、さまざまなメニューが楽しめる。
ガラス窓の先には、ホテルの中庭が織りなす四季折々の風景が広がっている。そんな景色を間近で眺められる窓際の席をリクエストしていたのだが、やはり人気なようで、今回はブースのようなソファ席に案内された。しかし、ここの居心地がとても良い。個室とまではいかないが独立しているので落ち着きがあり、なにより会話がしやすい。結果オーライだ。
グラススパークリングワイン付きのプランを予約したので、まもなくやってきたホテルのロゴ入り「GRAND CUVEE EXTRA DRY」で乾杯。ランチコース「モデラーレ」がスタートする。
ズッキーニのポタージュから。食感自体はフワフワと柔らかいのだが、添えられたピスタチオのスパイス「デュカ」がパンチを演出。どこかカレーのようなエスニックさを感じられ、コースの冒頭にまんまと食欲をそそられる。
まもなくやってきたベーカリー。トマトのフォカッチャは爽やかな酸味があり、何もつけなくても十分に味がある。スパイス香るポタージュと相性が良い。隣の長細いネジネジは、クロワッサン生地で焼いているそうだ。食感はご想像の通りサクサクで、案外あっさりと薄味だ。
ここで出てきたオリーブオイルが、咄嗟にメモに残すほど好きな風味だった。「Princess of Crete Bio」という、地中海・クレタ島のエキストラバージンオリーブオイルで、数々の受賞歴がある製品だそうだ。クレタ島で1969年に創業したEVRIPIDIS社が製造しているらしい。自宅でも買ってみようと思う。
そんなこんなでオリーブオイルも楽しみたかったので、フォカッチャは2ついただいた。
事前に断りを入れていない自分が悪いのだが、ディルやミョウガなど、苦手なものがたっぷり添えられた前菜が出てきてしまった。恐るおそる口に運んでみると、あれ、これはいけるぞ。いい感じにまとまってくれて、各々がそこまで主張してこない。
下には主役の真鯛が眠っていて、ピンクグレープフルーツやレモンマスタードドレッシングなどの柑橘が夏を演出する。どこか和食のような、なんだか馴染みがあるテイストで食べやすい。
筆者のイチオシがこちら。青柚子が使われたリゾットは、はじめて出会ったクリアなテイスト。クリーミーなものは多く見つけられるが、こんなに爽やかなリゾットは食べたことがない。鱧のフリットをのせて。
メインは鶏胸肉のグリル。下にはほうれん草が、上がバジルが添えられている。胸肉なのでちょっとあっさりしすぎかな、だなんて感想が一瞬よぎったのだが、いやいや、もも肉だったら重すぎるかも。ここまで柑橘類を存分に使って、爽やかに食べ進められるコースに仕上げてもらっているのだから、最後までスッと完食したいじゃない。
最後に出てきたデザートにノックアウトされた。「セミフレッド」とはアイスケーキのような冷たいイタリアンスイーツだ。ダックワーズというメレンゲを使用した焼き菓子や、ココナッツサブレを砕いたものが層に食感のリズムを生む。プレートに添えられたホワイトチョコレートやパイナップルのピクルスも、いい仕事をしてくれる。
コース全体が清涼感に包まれているので感じづらいが、気づけば最後にはしっかり満腹だった。毎日クーラーの風を浴び続け、夏バテのだるさに悩まされるこの時期でも抵抗なく食べやすい。なにより、筆者は柑橘系の料理が大好きだ。パーフェクトなランチで嬉しいひとときだった。