ハネムーンで訪れたモルディブ。「1島1リゾート」と呼ばれる、世界でも類を見ないスタイルを確立するモルディブでは、どの島(=ホテル)を選ぶかで旅の全てが決まると言っても過言ではない。
私たちが宿泊した「ギリランカンフシ(Gili Lankanfushi)」は、過去にトリップアドバイザーの「旅行者が選ぶホテルランキング」で世界・全89万ホテルの中のトップを獲得したことのある、業界では有名なリゾートだ。
そんなギリランカンフシで、私たち夫婦が五感で浴びたトップ・エクスペリエンスが、この「ハネムーン旅行記」には詰まっている。
ギリランカンフシの朝
5時起床。ベッドルームから出た足で、すぐにコーヒーを淹れた。太陽が昇るところを見るために早起きしてみたのだが、少し早過ぎたようだ。それもそのはず、ギリランカンフシでは「リゾートタイム」を採用していて、ここでいう5時はモルディブ標準時間の4時だ。
少しずつ明るくなってきたが、この日は残念ながら分厚い雲が水平線に集中していて、美しいサンライズは拝めそうにない。
結局、ぼんやりと明るくなっていく空を眺めるだけの時間になってしまった。しかし、コーヒーを飲みながら過ごすスローな朝は、これはこれでリゾートならではの良いひとときだった。真下を泳ぐ小さなサメやイカも見つけることができた(危険ではないそうだ)。
朝食開始の時間に合わせて、一番乗りでレストラン「Kashiveli(カシヴェリ)」へと向かう。この日は仲良しの担当サーバーが休みで不在と聞いていたので、少し寂しさを感じてしまった。たった数日前に知り合ったばかりなのに、こんな感情を持ってしまうことには驚きだ。
ギリランカンフシのスタッフは名札を着用していない。互いに会話を重ねる中でコミュニケーションを築き、名前で呼び合う仲になる。専属バトラーの「Mr./Msフライデー」だけではなく、レストランなどのスタッフも同様だ。皆が名前で呼んでくれて、カジュアルな会話を始める。45室のゲストをしっかりと把握しているようだ。
ゲストとスタッフを繋ぐコミュニケーションを生みやすいこのシステムが、リゾートでの生活をさらにリラクシングで心地良いものにする。
ギリランカンフシの素晴らしい朝食については、こちらの記事に詳しく書いている。
夢とうつつの狭間で
夕方まではヴィラでゆっくりと過ごすことにした。水着に着替えて目の前の海にも入ってみる。ヴィラ周辺の海は、時間帯によっては浅すぎて泳ぎづらく、魚の数は多くない。シュノーケリングを楽しみたいのであればスポットまで行ったほうが良いようだ。
シュノーケリングスポットについては、こちらの記事を読んでほしい。
魚は少ないが、ヴィラからこんなにも美しい海に直接アクセスできるのは、何にも代えがたい開放感を味わえる最高のものであった。
ひと泳ぎした後は、太陽に温められたホカホカのバスタオルの上で水着のまま横になり、読書を楽しむ。そして時折、目を閉じて、夢か現実か分からない狭間を彷徨ってみる。ここでは現実が夢を越えてしまっているかもしれないが──。
少しおなかが空いてきたので、インルームダイニングでクラブハウスサンドをオーダーした。
私たちは「ハーフボード」と呼ばれる、朝晩2回の食事がついたプランで宿泊している。いわゆる食べ飲み放題の「オールインクルーシブ」ではないので、ランチを含むその他の食事は別途料金がかかる。このクラブハウスサンドをはじめ、バーやヴィラでのドリンクなどは全て有料だ。
しかし、朝晩の食事にボリュームがあったり、クルージングやワインテイスティングのオプションに参加したりと、そこまで昼にしっかりとした食事を求めていなかったので、結果的にハーフボードでちょうどよかった。
ひとしきりデッキでの日向ぼっこを満喫した後は、ホテルアメニティとして用意されているオーガニック・バスソルトを使って湯船に入った。ギリランカンフシのヴィラは、どこにいても海を眺めることができる造りになっている。
週に一度の「カクテルパーティー」
ギリランカンフシでは週に一度カクテルパーティーが開催される。少し早めにヴィラを出て、ビーチを散歩したり、船着場で写真を撮りながら、寄り道を楽しむ。
カクテルパーティーの会場に着くと、すでにゲストが集まり始めていた。早速スタッフが3種類のカクテルをすすめてくれたので、アルコールを片手に会話を楽しむ。
スパのセラピストによるミニ・マッサージコーナーや、ホテルのグッズを販売するブース、ミニゲームなどが用意されていたが、やはりメインはホテルスタッフとのコミュニケーションだろう。
グラスが空になる度に次のドリンクを持ってきてくれるので、ディナー前なのに3杯も飲んでしまった。もちろんモクテル(ノンアルコールのカクテル)もあるので安心してほしい。
世界中からここに集まったゲストと一緒に、同じサンセットを眺めた。
星空ダイニング・ロマンティックディナー
ハネムーンのハイライトのひとつとして「プライベートキャンドルディナー」を予約した。島のどこにテーブルがセッティングされるかは事前に告知されていないので、バギーで送迎されて初めて知ることになる。ホテル側からのサプライズだ。
ビーチに到着すると、たくさんのキャンドルに囲まれたテーブルがセッティングされていた。
ギリランカンフシのキャンドルディナーは「ギリ・バーベキュー」と「モルディビアン・ロブスター」のコースから選択できる。私たちはバーベキューを選んだ。さらにコースの中身は事前のアンケートで細かくパーソナライズされる。
テーブルから少し距離をとったところで専属のシェフが作った料理が、専属のサーバーによって運ばれてくる、とても贅沢な経験だ。
シャンパンで乾杯してコースがスタートする。パンと2種類のフムスを楽しんでいると、まもなく事前に選んだコース料理がやってくる。
スターターは「ガーデンサラダ」と「マグロサラダ」の2種。一つずつ選び、二人で分けて食べた。スープは「ガスパチョ」または「ローカルパンプキンスープ」だったが、二人とも「ガスパチョ」にした。
メインの「バーベキューライブステーション」は、すぐ近くでシェフが焼き上げたバーベキュー料理を楽しめるものだ。海老、ローカルフィッシュ、ローカルツナステーキ、テンダーロインステーキ、とうもろこし鶏胸肉、ラムカツの中から、一人4つを選ぶ。
サイドディッシュも選択制。バスマティライス、オーガニックガーデンで育ったほうれん草、ミックスローカルベジタブル、焼ポテト、トリュフマッシュポテト、ペストクスクスと、多様な付け合わせから3種類ずつチョイスする。
とにかくボリュームがすごい。4人前ではないのかと驚くような量だった。テーブルいっぱいに美味しそうな焼きたての料理が並び、胃も心も満たされていく。
途中、強風に見舞われて席を移動させるハプニングもあったが、それも含めて思い出に残る特別な時間を過ごすことができた。
美味しい食事を味わいながら、結婚何周年かの記念旅行でまたここに戻ってこられるように、それまで頑張ろうと夫婦で誓った夜だった。
こうしてまた、旅の思い出に日常のモチベーションを託すのだ。